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** 丸井ブン太 風呂上がり、頭をタオルで乾かしながら部屋に戻った俺は、ベッドに転がしてたケータイのライトが光ってることに気が付いた。 手を止めてケータイを開くと、不在着信が七件。着歴に並んでたのは全部同じ名前だった。 「……?」 割合メールはすっけど、話があんなら昼休みにでも直接顔合わせて話す方が手っ取り早いから、電話は今日の放課後にから『今電話してもいい?』ってメールもらって、こっちから即行折り返して掛けたのが初めてだった。 そもそもメールするったって、俺から送ってそれにが返信するのがパターンだから、こうしたからのアクション自体珍しかった。それも七件。時間を見れば五分と置かない着信の連続だ。 (がこんだけ電話して来るってことは急用っぽいし、これってやっぱ掛け直すべきだよな?) そう思ってたら丁度、ケータイが鳴り出した。 テレビで何回か聞いたことがある、が好きだって言ってたから用に設定した着信音だった。鳴るのを聞くのはこれが初めてだ。 「はい、もしもし」 『……丸井、くん?』 もう少し用のこの着信音を聞いてたかったけど、何度も電話させて、まだ待たせるのも悪い。 そう考えてすぐに通話ボタンを押して出ると、まるで確認でもするみたいに、電話の向こうでが俺の名前を呼んだ。てか俺じゃなかったら、は七回、いやこれで八回目か。んなに何回も、誰に掛けたつもりなんだよ。 「おう、悪かったなすぐに出られなくてさ。風呂入ってて、今出たとこなんだ」 『ううん、わたしこそ何度も掛けてごめんね。今少しだけ、時間いいかな?』 「おう、いいぜ」 どことなく沈んでいるように感じるの声に、俺は何があったのか首を傾げた。 数時間前の初電話じゃもっとハリのある声だったんだけど、妙だな。 (幸村くんと何かあったのか?) 雪の所為で部活が急遽休みになった今日、はいつだったか幸村くんとした約束を果たしてたはずだ。 美術部の活動場所を教えてなかったって慌てた電話もらって、今日のミーティングはレギュラーだけのだから俺から幸村くんにメールしとくって言ったのに、は変に真面目だから断られて。 ミーティングが終わってから遅れて自主練に来た柳たちは、幸村くんは用事があるから今日は来ないとしか言ってなかったけど、二人は多分無事に会えて約束を果たせたはずだ。 (なのに何で、の奴は凹んでんだ?) 何も話さないで黙ったまんまのに、俺はますます首を傾げた。 あんまり静かだから切れてんじゃねぇかって疑ったけど、画面を見ればちゃんと通話中だ。それともまさか寝てんのか? 「? どーした?」 『……。今日、幸村くんに、酷いことしちゃったの』 「ひどいこと?」 『子供の頃のこと訊かれて、あからさまに話を逸らしちゃったの。幸村くん驚いて、困ってたのに、無視しちゃった……』 どうしよう、って最後に呟いたは相当凹んでるっぽい。 「幸村くんはんな器の小さい性格じゃねぇし、気にすんなって。多分明日には忘れてるよ」 『でも』 「それにのその反応も、事情があんだし仕方ねぇだろぃ? そこら辺の空気読むの幸村くんは上手いから、平気だって。チームメイトでより幸村くんのこと知ってる俺が言うんだから、間違いない!」 『丸井くん……』 俺を信じろ、とまでは恥ずかしくて、流石に言えなかった。 しばらくして「ありがとう」って言ったは、電話の向こうで笑ったみたいだった。 うーん、やっぱ話があんなら顔見て直接話す方がいいな、電話だとの笑顔が見られねぇし。 『丸井くんと話したら、心が軽くなったよ。ありがとう、丸井くん』 「いーよ、別に。だけどどーしてもが御礼したいってんなら、受け取らないこともないぜぃ?」 『ふふっ、考えておきます』 どうやらいつもネガティブ思考から抜け出して、普段のに戻ったみたいだ。 おやすみって終話ボタンを押して、沈黙したケータイを見て。俺は改めて、との会話は直接会ってする方のが好きだって思った。 約束の日 005*091127
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