Thanks 40,000hit!! // 玖恋しあさまリクエスト 俺な、さんのことが好きやねん。 え、知っとる? ああ、せやな。幼馴染の謙也にずっと相談してきたんやもんな。うん。ほんまおおきに。 ほんま謙也には感謝しとるんやで。謙也がおったから、俺はさんの存在知るきっかけがあった訳やし。 ほら。一年の冬に、しばらく天気の悪い日が続いとったんがようやく晴れて、久し振りに筋トレやのうてテニスができるでってなった日や。日曜日やってんけど朝から練習あって、それに謙也、遅刻ギリギリで滑り込んだ挙句、ラケット忘れて来たことがあったやん。 いや、あれは忘れられへんやろ。謙也風に言うたら、自分何しに部活来たんやっちゅー話や、ってところやな。 自慢の俊足で取りに帰れば済む話やのに、あの時の謙也、自分のアホさ加減にごっつ落ち込んどったやん。「ラケット忘れた俺はテニスプレイヤー失格や!」言うて。あの姿が脳裏に焼き付いて離れへんねん。 俺らも先輩らもあん時は流石に、謙也の間抜けっぷりがおもろいどころかいっそ憐れやってんやで。思い出しただけでチームメイトとして泣けてくるわ。 ――― そこにさんが、謙也のラケバ届けに来てくれたんやよな。 「謙也がラケット持たんかったらただ足が速いだけのアホやろっ、このスピード狂!!!」て、ど突かれとったけど。 あん時はまさか、さんのこと好きになるなんて思ってもみーひんかったんやで。実は。 ちゃんと名前知ったんは二年に上がって偶然委員会が一緒になったからやったし、そん時かて何や見覚えある子やなぁとしか思ってへんで、謙也と二人で話しとるとこ見て、あん時の子やってようやく思い出したくらいやったし。 ほな何でさんのこと好きになったのかって? え、……言うてへんかった? それは、あれや。二年になってから時々やけど、さん、ようテニス部の練習覘いてくようになったやん。 休憩時間にちょくちょく声掛けられとったから、謙也も勿論知っとるやろ。いや今もさんが来ると仲良さげに二人でよう話しとるけど。――― べ、別に羨ましいなんて思っとらんで! …………嘘です。ほんまはめっちゃ羨ましいです。 普通やったら家でのんびりしてたいはずの、日曜日の、それも朝にやで。 息切れするほど急いでラケバ届けてもろてた謙也も、休憩中にさんに声掛けられとる謙也も、当たり前みたいにさんに応援されとる謙也も、とにかく全部が羨ましかってん。 あんな風に純粋に、自分のこと応援してくれる人がおる謙也が羨ましくて、それがいつの間にか、謙也だけやのうて俺のことも見て欲しい思うようになって……。 ――― 気付いたら好きになってたんや。さんのこと。 せやけど現実は無情やねんな。ほんま泣けてくるわ。 三年なってクラスが一緒になったのを喜んどったのが一気にどん底や。 そら委員会の連絡でほんの数回話したことがあるだけやし、自分で言うてて悲しいけど親しいとも言えへん仲やけど、人が勇気振り絞って「おはよう」言うたら顰めっ面って。そのすぐ後に同じように声掛けた謙也には笑顔って。 いくら何でも温度差あり過ぎやろ! しかも謙也にだけそういう態度やったんなら、幼馴染で気安い仲やからって言い訳できたけど、俺以外の人間にも笑顔やったんやで!? 俺にだけ顰めっ面ってどういうこっちゃ!! しかもそれだけやない。 担任に伝言頼まれて呼び掛けたら、名前呼んだ瞬間にごっつ睨まれたし。 いくら話が盛り上がっとっても、俺の存在に気ぃ付いた途端に無表情なるし。 この間なんて、授業中に何や足にぶつかったからよう見たら消しゴムでな。それ、さんのやってん。 拾って、手渡す時にほんの一瞬指先が触れただけで思いっ切り振り払われたんやで。俺は病原菌か! せやけどな、好きやねん。 そない冷たくされても、何や理由は知らんけど嫌われとっても、さんのこと好きやねん。 好き過ぎて、な。…………やってしもたんや。 え、前振りが長い? ようやく本題かって? ああ、そういえば、うん、そういう話やったな。俺そんなに腑抜けとった? ……さ、さよか。 あんな、さっき休憩時間に、忘れ物あって教室に取り行ったら、さんがおってん。 俺が教室入った瞬間やっぱり顰めっ面されたんやけどな、俺な、頑張ってん。「何しとるん?」って声掛けたんや。多少上擦っとったかもしれへんけど。 そしたらやっぱり「白石には関係あらへんやろ」って一刀両断されてもうてな。うん。わかっとった。わかっとったけどグサッと来たわ。 ほんでな、情けない話泣きそうになってんけど、何でもない振りしてさっさと用事済まそう思てん。これ以上おってもさんに不愉快な思いさすだけやし、泣きそうやし。好きな人の前でそない情けない姿晒せる訳ないやん。 けど教室出る寸前に、呼び止められたんや。さんに。 黙って出てくのも感じ悪いし、適当に声掛けようとしとった時やったから驚いて、つい変な声出てもうてな。笑われたんや。最初は驚いとったけど笑われてもうて、さんの笑顔をな、初めて真っ正面から見れたんや。 それが嬉しくて嬉しくて…………「好きや」って、ぽろっと言うてもうたんや。 へ、返事? そんなもん聞くまでもあらへんやろ! ちゅうか結果がわかっとってもさんの口から明確な言葉なんて聞きたないし。我に返ってさんの「こいつ今何言うた?」って顔見た瞬間にダッシュやダッシュ。あん時の俺、謙也にも負けへん速さやったと思うで。 ちゅうかもう、明日からどないしよ。学校来れへん。教室行かれへん。 やって、嫌っとる人間に好きや言われても嬉しないし気持ち悪いだけやろ。……あかん、自分で言うてて泣きそうや。 ――― あだっ!! ちょ、傷心中の人間に何すんねん!? は? 白石もも焦れったいって何やねん。何で謙也に殴られなあかん挙句、さんの名前が ――― は? ………………ちょ、ちょお待て。いや俺が それに謙也には、好きな人に嫌われとる情けないこの俺が って、せやのうて!! は、え? 俺とさんが両想い? え、何その笑えへん冗談。傷心中の俺を更に抉る魂胆か? え? …………ずっと相談されとった? 謙也が? さんに? 俺のことを? 二年になって練習覘くようになったんは、二年で部長になった俺を気にしとったから? 謙也にばっかり声掛けとったんは、俺には緊張して話し掛けられへんかったから? さんも、謙也のこと羨ましい言うてた? 俺みたいに? クラス一緒になって、さんも喜んどった? え、あの顰めっ面って緊張するん誤魔化そうとしとったん? 名前呼んだら睨まれたんも、照れ隠し? 俺に気付くと無表情になっとったんも、振り払われたんも? ――― 俺、もっかい教室行って来るわ!! (自分らとっととくっ付けや!!) 100608 ■白石が好きなゆえに素っ気無い態度を取ってしまう女の子の話。 この手の系統は女の子側の視点が多いので、敢えて白石に語らせてみました。結果ヘタレになった。と言うか女の子ではなく白石の話になってますね。 状況を補足すると、放課後の部活中の話です。 休憩時間の後から急に様子がおかしくなった白石を部室へ強制連行し、白石本人の希望で謙也と二人きりにさせてもらって至る冒頭、と。 ただ女の子の設定が在り来たりになってしまったことが少々悔やまれます。私の力量で話を展開させるためには止むを得ませんが。 このような話となりましたが、それでは玖恋しあさま。リクエスト誠にありがとうございました! |