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「みん、と、ん?」「ミントン」 「みん、とん……?」 「ミントン!」 「…………ミントン?」 「そう! もしかしてミントン知らないの?」 が頷くと、青年は目を瞠りありありと驚愕を浮かべた。 いくらなんでもそこまで驚かれるとは、まさか『ミントン』とは誰しもが知っている一般常識なのだろうか。 「ミントンを知らないなんて、人生の半分損しているようなものだよ!!」 しかし拳を握り熱弁する彼を見て、恐らく違うだろうと、何となくは思うのだった。 060
「くり返すようですが」草取りする手を止めて、山崎はを振り返った。 手元から目を離さず淡々と作業をこなしているの顔には表情がない。先程の声も、同じく平淡だった。 「私を監視したところで、得るものは何もありません」 「……本当に?」 「今ここで嘘をつけば余計な不審を買う。嘘をつく理由もない。私たちはただ『普通に』生きたいだけ」 「うん、それは今朝も言ってたね」 は手を止め、山崎を振り返る。 その顔には不思議そうな、年齢にはそぐわない幼い表情が浮かんでいた。本当に、純粋な疑問が浮かぶ。 「どうかした?」 「……いえ、あっさり正体を明かすのだなと思って」 「そう? ほら、さんも今言ってたけど、嘘つくだけ余計な不審を買うだけだから」 それに、と山崎を苦く笑った。 「さんに関してはまだまだ疑問が残るところだけど、悪い子には見えないから」 そんな個人的な主観に基づいていいものなのだろうか。 思いながらも、そうですか、とは当たり障りない反応をするに留めた。 061
またご飯を作りに来て欲しいと随分切実な懇願を受けながら、は真選組の屯所を後にした。パトカーの後部座席に座り、隣には安売りで手に入れたトイレットペーパーを乗せてはぼんやりと窓の外の景色を眺める。ジュッと音がし、目を向けるとフロントミラー越しに煙草に火を付けた土方と目が合う。 見回りのついでと言い、を万事屋に送ると言い出したのは思えばこの男だった。 自分がこの男によく思われていない自覚があるから、男の申し出には首を傾げた。しかし追求しようとは思わない。そのまま最初連れてこられた時と同様に、助手席に座る総悟に押し込まれて現在に至っている。 「今日の夕食は何にするでさァ?」 「……何が安いのかによります」 「何でェ、だったら先にスーパーに寄りましょうぜィ」 言うが早いか、の回答を訊く前に直進するはずの道でハンドルが切られた。 062
「はい、さん。これお土産です」新八が差し出したものを受け取り、視線の高さまで持ち上げたは首を傾げた。 白く黄色い嘴を生やすそれは左胸に名札のように『宇宙怪獣 ステファン』と書かれたものを付けている。何かすごく見覚えがある生命体だ。 「私が選んだアル!」 「……ありがとう」 感謝、してもいいのだろうか。 置き場所に困ったぬいぐるみを見つめて、は物凄く複雑な気分だった。 一方で周囲にはそんな態度がお土産をお気に召したと誤解されているのであったが、本人は気付かないし気付けない。 063
今巷を騒がせる怪盗ふんどし仮面の被害に遭ったお妙の怒りは凄まじかった。新八によれば、お土産だったにあげたのと同じぬいぐるみが被害に遭い、八つ裂きにされたそうだ。 その話を聞いたは数秒の沈黙のあと、自分への土産である『宇宙怪獣 ステファン』を新八に押し付けた。 「で、でもこれはさんへのお土産ですから」 「いい、お妙にあげて」 私はいいから、と言うに新八は感極まった。 普段から表情の変化に乏しく、実は少し取っ付き難いなぁとに対して思っていたのだけれど。今この瞬間に改めよう。 「ありがとうございます、さん!」 単に扱いに困っていただけのの行動は、そしてまた、誤解を招く。 だがやはり、は気付かないし気付けない。 20080821
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