024
 今日は反対方向にあるスーパーが共に安売りをしていたから神楽と二手に分かれて買い物に行き、家の掃除を新八が買って出てくれたので彼に任せたのだ。
 ところが、買い物を済ましていざ万事屋に戻ってみれば掃除されているはずの部屋は出掛ける前にも増して汚れ果て、テーブルの上には神楽が買いに行ったトイレットペーパーが一ロールだけ置かれていた。

 何があったのだろう、とは首を傾げる。
 トイレットペーパーの下には三人で散歩に行ってくると言う銀時直筆のメモが残されていた。

 一先ず、は部屋の片付けをすることにした。
025
 右に首を傾げると、向かい合う相手は左に首を傾げて鏡合わせのように動く。反対に動いても以下同文である。
 犬、と言うには一回りや二回りどころではなく大人二人は余裕で背中に乗れるほど大きなその存在には困惑した。

 説明を求めるにしても、適任である新八の姿がない。
 随分と嬉しそうな神楽と正反対に疲労困憊している銀時、どちらにも適確な説明は求められそうにない。

「どうしたんですか……?」

 しかし、訊かずにはいられなかった。

「定春言うネ!」

 答になっていなかった。
026
「はつこい……」

 初恋である団子屋で働いていた娘に、彼女のものである簪を返したい。
 いつ死んでもおかしくない状況にある老人は、車に轢かれて左足を骨折した新八を見舞いに来た銀時が万事屋であると知るとそんな依頼をした。

「何だお嬢さん、その年でまだなのか? どうだ、その相手わしにせんか?」
「死に掛けてるジジーが何言ってんですか」

 痛烈に、新八が毒を吐いた。
027
 銀時や新八は危険だから無闇に手を触れてはいけないと言っていた。
 しかし反して、神楽はおとなしくて可愛いイイ子だからそんなことはないと言った。

 どちらかと言えば神楽の意見に賛成であるであったが、今目の前にある光景に一転して銀時と新八の言葉に同意したい気持ちになった。

 仕事の依頼で話を聞きに出向くと言って銀時たち三人は早いうちに出掛けて行った。
 定春と一緒に留守番を任されたであったが、買い物をするため定春に留守番を任せて一旦万事屋を出て、早々に用事を済ませて戻ってきたのだが。

「定春、何食べてるの……?」

 『何』と言うよりも寧ろ、『誰』であったが。
20070928