どうして泣いてるんだ? 訊ねても、は首を振るばかりで何も言わない。 唐突だった、俺の方をじっと見つめている視線を感じて、あまりに熱心なその視線に耐えかねて振り返ったら、と目が合ったんだ。 そしてと俺の目が合った途端、は泣き出した。 声を上げるでもなく、取り乱すわけではなく。ただ静かに、澄んだ黒色の瞳から次々と涙を溢れさせて。 当然、俺は呆然となった。 そんな俺の様子に気付いた仲間たちが俺の視線をたどってを見て、俺と同様に驚きに目を瞠る。 俺が特に何かしたわけじゃない。ただ、振り返って目が合っただけだ。 それなのにエアリスとティファから送られる突き刺さるような非難めいた視線をはじめ、からかい混じりに揶揄するもの、俺と同様に戸惑うもの、様々な視線が集中する。 居心地が悪くなった俺はの手を引き、バレットたちから離れた。街から街に移動している途中の何もない平原だったため、仲間たちに背中を向けた俺の前にを立たせて壁をつくる。 「、どうしたんだ突然……?」 「なっ、でも……」 「何もなくて、いきなり泣き出すはずがないだろう」 乱暴に涙を拭って泣き止もうとするの手を掴んで止めさせる。 覗き込んで見たの目は、泣いたことだけが原因ではなく、赤くなっていた。 「俺が何か気に障ることをしたなら謝る、悪かった。頼むから泣き止んでくれないか?」 「クラウド謝る、じゃない、ただ……」 の言葉がどう続くはずだったのか、それはわからなかった。 言葉の途中でまるでしがみ付くように俺に抱き付いてきたが、しばらくこうさせて欲しいと言ったささやかな駄々を俺は受け入れ、宥めるようにの背中を撫でる。 が何故泣くのか。結局、この時の俺にはわからなかった。 |