弾丸が掠り、血が滲む肩に構わず、は刀を一閃した。
 確かな手応えが伝わる。しかし、収穫はわずかでしかない。

 マテリアも持たない自分の武器は、神羅屋敷から脱走したばかりの頃に襲撃してきた神羅兵から奪ったこの刀一本しかない。だが対する敵の手には連射が可能なマシンガンが握られているのだ。それも一人や二人と言う人数ではない、あまりに分が悪過ぎた。
 しかしだからと言って、に諦めるつもりはさらさらない。今ここで殺されるくらいなら、少しでも多くの敵を道連れにしてやる。そうでもなければ死に切れない。

 たった今斬り殺した神羅兵から敵と同型のマシンガンを奪い、敵の弾をかわしながら引き金を引く。
 刀といい銃といい、一体どこで扱い方を習ったのか。それは自身にもわからない。だが今は感謝すべき知識だった。記憶はなくとも身体が憶えていて、勝手に動いてくれる。

 お陰でおよそ半分、敵の数を減らすことができた。
 弾が切れたマシンガンを敵目掛けて放り投げて目晦ましにし、そのまま刀で斬り殺す。そしてまたマシンガンを奪い ――― そのくり返しだった。


(はやく……はやく……!)


 ザックスと、クラウドと、
 三人で必死に目指してきたミッドガルの街が、もうすぐそこにある。

 クラウドを背負うザックスを先に行かせたが、追っ手が他にいないと言う保障はどこにもない。
 敵はソルジャーと言う戦闘のエキスパートの中でも上位にいたと言うザックスが負けるような相手ではないが、自力では立つこともままならないクラウドを護りながらとなると、敵の数が多いだけに苦戦を強いられることは必至だ。

 殺されるくらいなら、より多くを道連れにする。
 しかし本当は、殺されるわけにはいかない。
 一秒でも早く、ザックスとクラウドの許へ行かなければいけない。


 そして三人でミッドガルに行くのだ。
 何でも屋をやろうとザックスは言った。クラウドもも一緒に。

 俺はデスクワークは苦手だから、にはそっちの仕事をしてもらいたいなぁ。
 それで俺たちが仕事から帰って来たら、「おかえり」ってに出迎えてもらって、が作った美味いメシを食いながら仕事のこととか、今日あったことを話すんだ。
 休みの日もつくって、その時は三人で出掛けよう。スラムにも花が咲く綺麗な場所があるんだ。とクラウドにも見て欲しい。すごく綺麗で、そこで花の世話してる娘も綺麗なんだ。
 きっと二人とも気に入るし、もその娘とすぐに仲良くなれると思う。なあ、いいだろう?



――― 一発の銃声が希望を切り裂く、その時までに。
SNIPE
ねらいうつ
20080302