試着室から首だけを覗かせたが困ったように手招きするのに、エアリスは首を傾げた。 エアリスが選んだドレスはこの店に並ぶ商品の中でも露出度が高いドレスであったが、普段から二の腕や太腿などを晒した服を着ているが今更恥ずかしがるほどのものではなかったはずだ。 それともドレスと言う勝手が違う服だから、やはり恥ずかしいのだろうか。 だがの許に歩み寄り、彼女の背中を見せられたことでエアリスはの戸惑いを理解した。 の白い肌によく映える、の髪と瞳と同じ漆黒色のドレスは背中が大胆にも開いたデザインになっており、その外気に晒されたの背中には、右肩から左袈裟にかけた刀剣類による大きな創傷の痕があったからだ。 傷は完全に塞がっているものの、出来てからそれほど経っていないように見えた。 少なくとも、ここ一年以内に出来たものであることは確かだ。 エアリスが問うても、は困ったように曖昧な表情を浮かべる。 が答えないのならとクラウドに訊ねれば、クラウドはエアリス以上の驚きを露わにした。仕舞いにはエアリスを押し退けて、に詰め寄り出す。 けれどもは、ただ哀しげに微笑むだけだった。 「大丈夫、痕、痛み……ない」 「そういう問題じゃないだろう! そんな傷いつ ―――」 「これは!」 珍しく語気を強めたに遮られ、クラウドは口を噤む。 は笑った。泣くことを堪えるような、酷く歪んだ笑顔だった。 そんな顔もできるのかとエアリスは驚き、クラウドは言葉を失くしていた。唇を震わせながらは言葉を続けた。 「これは、『証』。消えちゃ、だめ……残らない……悲しい、こと……」 「……」 口下手だから、と言うわけではない。 第三者であるエアリスには何の話かさっぱりわからなかったが、クラウドにもの言いたいことを理解できている様子はなかった。眉間に皴を寄せた難しい顔でじっとを見つめている。 「そんな顔、だめ、台無し……クラウド、ちゃん?」 はぐらかすように、は女装中のクラウドを茶化した。 |