社長室から繋がる屋上のヘリポートに着陸したヘリから降り立ったのは、真っ白なスーツに身を包んだ、クラウドとはまた色合いの違う金髪の男だった。男の突然の登場に舌打ちしたバレット曰く、男の名はルーファウス。神羅の副社長であり、プレジテント神羅の息子だという。 そんなこちらの一瞬の隙を突いて駆け寄ったパルマーに、ルーファウスは事の次第を聞いたのだろう。クラウドたちが駆け付けると、ヘリのエンジン音に混じりセフィロスの名を呟く声が聞こえた。そしてルーファウスは顔を上げると、クラウドたちをぐるりと見回しながら「ところで」と口を開く。 「お前たちは何なんだ?」 「元ソルジャー・クラス1st。クラウドだ」 「アバランチだ!」 「同じく!」 「……スラムの花売り」 「……実験サンプルだ」 クラウド、バレット、ティファ、エアリス、レッドⅩⅢが順に答えた。しかし自分から訊ねておきながら、ルーファウスの表情にクラウドたちへの関心の色はなかった。唯一名乗らなかったに「お前は?」と促しても、やはりその色はやはり変わらない。だからという訳ではなかったが、は沈黙を続けた。 するとあっさり関心をなくしたルーファウスは、クラウドたちを改めて見回して「おかしな組み合わせだな」と揶揄した。確かに所属も思想も違う、統一性のないパーティであるためか、クラウドたちは誰も何も言わなかった。いや、単にそんな軽口を挟めるような雰囲気ではないからというのもある。 「さて、私はルーファウス。この神羅カンパニーの社長だ」 「オヤジが死んだら早速社長か!」 「社長就任の挨拶でも聞かせてやろうか?」 顔に掛かる前髪を払ったルーファウスは、吐き捨てるバレットの皮肉を嗤って受け流す。 それにバレットは眉を吊り上げ、右腕の銃をルーファウスに向けようとした。だが寸前で隣のティファに止められる。 ルーファウスはそんなバレットを歯牙にも掛けずに語った。父は金で世界を支配しようとしたが、自分は違う。自分は恐怖でこの世界を支配するのだと。 その様子を、ティファはバレットの右腕に抱き付いて彼を押さえ込みながら、「演説好きなところはそっくりね」と揶揄した。父親と自分は違うのだと言った直後のこの皮肉は流石にルーファウスの中の何かに障ったのか、己に酔った様子だったルーファウスの眉がぴくりと撥ねた。 振り返ったルーファウスの顔にははっきりと不愉快だと書かれていた。父親と同一視されることは、ルーファウスには余程許し難いことらしい。今のルーファウスの目には、つい今し方までは存在していなかった、クラウドたちに対する『関心』の色があった。 「バレット」 と、クラウドが突然、バレットの名を静かに呼んだ。 バレットは返事をせずに目を向けただけだったが、バレットの斜め前にいるクラウドにはそれで十分だったらしい。 「エアリスを連れて今すぐビルを出てくれ」 「何?」 「説明は後だ! 本当の星の危機だぞ!」 ルーファウスから視線を外さないクラウドには鬼気迫るものがあった。 今は俺を信じてくれ、と。これまでのクラウドからは信じられない言葉を掛けられたというのもある。 「俺はこいつを倒してから行く」 「……ああ、わかったぜ、クラウド!」 バレットは戸惑うエアリスの腕を引いて中へと戻った。ティファとレッドⅩⅢも後に続き、残ったのはクラウドとルーファウス、そしての三人だけだった。 バレットたちの気配が遠ざかると、そこでようやくルーファウスから視線を外したクラウドは、隣で既に臨戦態勢に入っているを見やる。そして一度は口を開いたが、結局は何も言わずに背中のバスターソードの柄を握った。 クラウドもまた臨戦態勢に入ると、クラウドのをそれぞれ一瞥したルーファウスはため息混じりに前髪を掻き上げた。 「何故、私と戦うのだ?」 「お前は約束の地を求めてセフィロスを追う」 「ふむ、その通り。――― ん? お前はセフィロスが古代種だと知っているのか?」 「……いろいろあってな。とにかく、お前にもセフィロスにも、約束の地は渡せない!」 「なるほど。トモダチにはなれないようだな」 |