希望を切り裂いたのは、一発の銃声だった。


「こっちはどうしますか?」
「放っておけ、重度の魔晄中毒者だ。直に野垂れ死にして終わるさ」

 頭上から注ぐ声が聞こえていなかったわけではなかった。自分に向けられているものだということもわかっていた。
 ただ理解することが追い付かないだけだ。目の前の光景から目が放せず、ただでさえ回らない頭が占められている。

 顔に掛かった温かく、鉄くさい液体。
 縺れるように倒れ、動かなくなった身体。
 輝きが失せ、濁る瞳。

 記憶にあるどの表情にも当て嵌まらない、初めて見る何の感情も見せない表情。


 一体何が起こった?
 『コレ』は、何だ?
 何故、動かない?
 どうして、冷たくなる?


(あ、か……い?)

 地面が、服が、両手が染まる。
 ――――― の、命の色に。


「ぁ、あっぅ、あ、うあああああああああああああああああああああああ」


 例えようのない胸の痛みに、眼の奥が熱くなる。
 頭の中が白くなり、何もわからない。考えるよりも先に、考えることもできず。


 ――― 剣を手にした。





 が駆け付けた時、そこに広がっていたのは信じ難い現実だった。
 無残にも斬り殺された神羅兵と、他の兵士たちとは違う軍服の明らかに上官とわかる神羅兵の死体。
 記憶の中、いつでも笑っていたザックスの色のない顔。

 血の海に立ち尽くし、バスターソードを片手に泣き出した空を仰ぐ、クラウドの姿。
IMPULSE
しょうどう
20080302