何とも個性的なゴールドソーサの園長ディオと別れた後、たちがやって来たのはワンダースクウェアと呼ばれるエリアだった。 他にも、ディオが一押しするバトルスクェア。チョコボ・レーシングを開催しているチョコボスクェア。ジェットコースターに乗って的を打ち落とすスピードスクェア。劇などが催されるイベントスクェア。ゴールドソーサの各エリアを空から遊覧するロープウェイがあるラウンドスクェア。そしてその名の通りのゴーストホテルと回ってきたが、ここワンダースクェアは、他とはまた雰囲気の違う場所だった。屋台やベンチがあることから、休憩所としての意味も兼ねた場所なのかもしれない。 どこへ行っても電飾が眩しい園内を見回したは、少し離れた場所で子供たちの相手をする真っ白な物体を目に留めた。 子供たちに風船を渡しているそれは、白のすんぐりむっくりしている身体で背中に小さな羽を生やし、王冠を被りマントを身に着ける猫を頭に乗せていた。しかもよく見ていると、猫の動きに合わせて白の巨体が動いているではないか。いや、白の巨体に合わせて猫が動いているのかもしれないが。 「? ……風船が欲しいのか?」 の視線に気付いたクラウドが訝しげに訊ねてくる。 一瞬何を言われたか解せなかったはきょとんとした顔でクラウドを見上げ、そしてむっとした顔で首を振った。いくらなんでも風船を欲しがるほど子供ではない。 人形に視線を戻すと、丁度子供たちを見送った人形がこちらを振り返った。 白の巨体にある瞳はその身体に似つかわしくないほど円らだった。だがそこに生命の息吹は感じられない。機械のようだ。頭の上の猫も現実にあんな猫はいないため機械だろう。だがどうしてか、目が合ったような気がした。 「Hey you!!」 ……どうやら気のせいではなかったらしい。 親しげに片手を挙げた猫と白い巨体はそのままこちらに向かって来る。 「どうですかぁ? 皆さんの未来占うで〜。明るい未来、愉快な未来! あっ、悲惨な未来が出たらかんにんしてや〜!」 独特なイントネーションと口調でそんなことを言ってくる人形は、どうやら猫の方が本体らしい。白い巨体は牙を生やした大きな口を持ってはいるがぴくりとも動かず、その代わり猫の口の動きは本当に人形か疑いたくなるくらい饒舌だった。 人形の登場にエアリスは「あ、デブモーグリン!」嬉々とした顔で両手を合わせる。デブと言うからには、白い巨体の方のことだろう。そう言えば、ゴールドソーサのエントランス床に、太ったチョコボと赤い鼻の生き物の他に、この生き物の絵が描かれていた気がする。 「あらら、すんません! ボクは占いマシーンのケット・シー言います。以後お見知り置きを」 「占うのは未来だけか?」 「バカにしたらあかんで! 失せ物、失せ人、何でもございや!」 「なら、セフィロスという男はどこにいる?」 いくら痕跡がここに来て途絶えたとはいえ、まさか占いに頼ったクラウドには複雑な心境だった。 任せておけと言わんばかりに胸を張り、不思議なダンスを始めたケット・シーの様子が、その心象をますます複雑にする。はっきり言って胡散臭かった。 やがて出た占い結果を受け取って、その用紙を広げたクラウドは眉を顰めた。 「……中吉。活発な運勢になります。周りの人の好意に甘えて一頑張りしておくと、夏以降にどっきりな予感。……何だこれは?」 「あれっ? もっぺんやりましょか?」 やっぱり、とは思った。ケット・シーは謎のダンスを再び始め、その結果を再びクラウドに差し出す。 「忘れ物に注意。ラッキーカラーは青? …………もういい」 「待って〜な、もっぺんやらして!」 今度のダンスは今までで一番激しかった。 そもそもこのダンスと占いに一体どんな関係があるのか、には不思議だった。何よりも隣でこれを「可愛い」と評価するエアリスの感性が理解できない。 いい加減馬鹿らしくなってきたのか、クラウドは呆れ顔だ。三度目の結果を受け取る手が心なし御座なりに見えた。――― が、その表情は結果を目にした途端に一変した。 「何だと!?」 「な〜に?」 「……求めれば必ず会えます。しかし、最も大切なものを失います」 「ええんか悪いんか、ようわからんなぁ。こんな占い初めてですわ。気になりますな〜」 猫の人形が腕を組むのに合わせて、デブモーグリンもまた腕を組む。 そしてケット・シーは何事もなかったかのようにぱっと両手を挙げて「ほな、行きましょか」と事も無げに言った。これには流石に、ケット・シーの一挙一動を可愛いと言っていたエアリスも驚いた顔をする。もクラウドも同じ気持ちだった。 「何言ってるの?」 「占い屋ケット・シーとしては、こんな占い不本意なんです。きっちり見届けんと気持ちが治まらん。皆さんと一緒に行かせてもらいますわ!」 「……どうするの、クラウド」 しかし、クラウドは答えない。 突拍子もないことを言い出したケット・シーをまじまじと見つめていたも不審に思い、クラウドを見上げた。そしてその不思議な色をした瞳と出会う。クラウドは何故か真剣な表情でを見つめていた。 「クラウド……?」 「どないに言われても、ボクは付いて行きます!」 「――― は? お、おい!」 どうやら状況を把握できていないクラウドはケット・シーの同行宣言に慌て、しかしその意気込みようを見ていろいろと諦めたらしい。深いため息を零した。 ケット・シーを可愛いと言って歓迎ムードのエアリスと、その褒め言葉に満更でもなさそうなケット・シー。 少し先を歩く二人 ――― 一人と一匹と一体、と言う方が正しいだろうか ――― を見て、は隣を歩くクラウドを見上げる。また先程の真剣な表情に戻っているクラウドは、何やら深く考え込んでいるみたいだった。の歩幅に合わせて歩いてはくれいているが、恐らく意識的なものではないだろう。 はそんなクラウドの手を不意に握り、驚いてこちらを振り向いたクラウドに、意図せず微笑んだ。 そして、繋いだ手は強く握り返された。 |